BHS International Conventionで開催されるEveryone In Harmony Chorusについて解説してみる

2018年5月3日音楽

BHSの会員証明書

Barbershop Harmony Societyに登録しました。年会費($120!)を払えば誰でも会員になれるし、ステータス的なものではあるのですが、会員証とバッヂが届くとなんだかテンションが上がります。

さて、ブログだけ読むと唐突ですが7月にアメリカ・フロリダ州オーランドで開催されるBarbershop Harmony Society International Conventionに参加することにしました。メインイベントはカルテット、コーラスのContest、すなわち世界大会ですが、それに付随して色々なイベントが行われるようです。ぼくも行くのは今年が初めてなので全容はよく分かっていません。
7月4日(水)から9日(月)まで休暇を取ったので、水曜の夕方にこちらを発って、向こうの水曜夜に到着、日曜の朝に発って月曜夕方に帰着するようなスケジュールです。

参加するといっても基本的には見てるだけ……だったんですけど、どうやらステージに上がれるイベントがあると知って、ノータイムで参加申し込みしました。
それがこのEveryone In Harmony Chorusというイベント。事前情報でJim Henryという、Ambassadors of Harmony[1]のDirectorの指導が受けられるということはキャッチしていたので、できたら参加したいなあくらいの気でいたら、蓋を開けてみれば大会と同じステージで歌えるというとてつもないイベントでした。
参加料は一般$35、BHS会員は$25(登録しておいてよかった!)と、著名な指導者の指導が受けられ、ステージで歌えるイベントとしては破格の値段です。

このイベント、どうやら今回が初の試みらしく情報があまり出ていない上、詳細がなぜか参加登録後のページ上にしか載っていないので、参加を検討している人向けの紹介と記録を兼ねてまとめてみます。

About Everyone In Harmony Chorus

そもそもどういうイベント?

Midwinter Convention(リンクは今年1月にカリフォルニアで行われた際のもの)において行われていたAll Chapter Chorusという、(恐らく)公募型のステージが好評だったということで、Internationalでも同じことをやろう!という趣旨のようです。みんな人が歌ってるのを見たり、その辺でタグだけ歌ったり[2]するよりもちゃんとしたコーラスで歌いたい!という思いのほうが強いよね、っていうことが書いてあります。登録した人に事前に楽譜とLearning Trackを配布して、事前に練習しておいてもらって、Conventionの合間にリハーサルして土曜に本番、という流れ。指揮指導はGold Medalistが担当し、世界トップクラスの指導が受けられるのが大きな特徴、と思っていたらステージまで用意されているという大盤振る舞いっぷり。システム的には日本の公募合唱とそう大きく変わりませんが、スケールが大きすぎます。

参加条件は?

International Conventionに来ている人なら誰でも!BHSのConventionは男声のイベントで、Contestに出られるのも男性(not男声)のみなのですが、このイベントは男女問わず参加できます。BHSの会員でなくても可です。会員の方が金額的に有利($10しか違いませんが)。

会場は?

リハーサルはHyatt Plaza Ballroomという、Conventionの会場直結のホテルの会議室のようです。「Chorditoriumと一緒だよ」って書いてあるけど、そのChorditorirumの情報はどこだ。
本番は先述の通りContestと同じステージです。胸熱すぎない?

日程は?

リハーサルが下記の通り。
4日(水)15時~16時半(Quarter SessionとYouth Sessionの間)
5日(木)17時半~19時(Quartet SemifinalとAIC Showの間)
6日(金)15時~16時半(Chorus Contestの休憩中)

本番は7日(土)夕方、Quartet Final直前のSaturday Night Spectacularというイベントです。

指導者は?

DirectorがJim Henry(Ambassadors of HarmonyのDirector)とDebbie Cleverland(The Buzz[3]のLead)の2名。
Section Leaderを混声カルテットでチャンピオンになったDouble Dateが務めます。
全員Gold Medalist、即ち世界大会で1位になる実力がある指導者です。

参加費は?

Barbershop Harmony Society会員:$25+$2.12 fee
Barbershop Harmony Society非会員:$35+$2.57 fee
18歳未満:$15+$1.67 fee(ただし、BHS会員である必要がある模様)
楽譜やLearning Track等の費用も上記に含まれています。まだ参加していないのでなんとも言えませんが、ずいぶん破格なように思えます。

リハーサルは全参加が必須?

これは自分も心配していたのですが、全ての参加が必須ではなく、少なくとも2回は出てほしいとのこと。
水曜の夜に現地に着く都合上、自分は最初のリハーサルにはどうやっても出られないのですが、とりあえず問題なさそうでよかった。
難しければ主催まで問い合わせてね、とも書いてあります。この情報、申し込み前に知りたい人多そうですけど、なんで公開されていないんでしょうか……

衣装は?

Concert Black
という指定。スーツでもタキシードでもドレスでもいいけど、あなたが100万ドルの価値があると感じる衣装で、世界中の人があなたのことを見て、特別な夜のためにドレスアップしたことが分かる衣装にしてね、と。書き方が逐一Metaphoricなのは英語ならではなのか、それともBarbershopだからなのか。

ジーンズ、テニスシューズ、カジュアルなものはやめてね、とも。うーん、いつも演奏会で使う黒衣装持っていくかなあ……

曲目は?

これも皆気になるところだと思いますが、登録後のページにしか記載がありませんでした。

・Show Me Where The Good Times Are(arr. by Gene Cokeroft and Dot Short)

アップテンポのオールドスタイルナンバー。男声で書かれた曲を混声でやるからか、キーをD♭→E♭に上げて演奏するだろう、とのこと。Learning Track準拠、要するにテンポやリズムはTrack通りにいくよ、ということでしょうか。

・Circle Of Life(arr. by Gary Lewis)

ライオンキングの有名な曲。厳密にはバーバーショップではないらしいです。はて。
こちらは混声で書かれたものなのでキー変更はなし。8声の中から好きなパートを選びます。ちなみにソロはもう決まっているとのこと。ということはDouble Dateのメンバーが歌うんでしょう。だから、ソロパートは車の中で大声で歌ってもいいけど、コーラスの練習をちゃんとしてきてね、って書いてあります(笑)

どのパートを歌えばいい?

Circle Of Lifeの方はもともと8声ですから、自分のパートを選んで歌えばいいですが、問題はShow Meの方。
もともとTTBBで書かれたものをそのままSATBとして扱うようです。そのためにキーを上げる、ということですね。なので、男声は基本はBassかBari、何人かはLeadを歌ってもよい、と書いてあります。ただ、テナーを歌えなければ楽しくない!って人はテナーを歌ってもいいよ、とも。なんだか皮肉めいたものを感じます。
女声はLeadかBaritone、何人かはTenorを歌う、ということ。なんだかずいぶんとBaritoneが多くてTenorが少なくなりそうですが、大丈夫なのでしょうか。こちらもBassに関して男声と同様のことが書いてあります。

参加者に求められることは?

ここにはなかなか厳しいことが書いてあります。厳しいとはいえ、当然のことではあるのですが、日本ではここまでのことを書かれることは多くないように思います。日本語訳しようとがんばってみたのですが、このニュアンスは日本語ではなかなか伝わりにくい部分もあるので、そのまま引用してみます。

Show up to our first rehearsal NOT holding music. However, have it ready to check now and then if your director asks to visually check your music or mark something. We expect you to be like all of us… you will make mistakes and may have performance errors BUT… you know all the words and notes, you are just getting used to singing with real people (instead of a learning track). You don’t need a gold medal voice, but you can prepare like a champion!

To be blunt, standing on the risers next to people who sing wrong notes and words makes the experience for everyone within ear-shot on the risers disappointing AND frustrating, and this person lowers the musical experience for these people who DID prepare. Please respect your fellow singers and prepare as you hope they do!

We will be rehearsed by a gold medalists with world-class section leaders. Debbie Cleveland, Jim Henry, and Double Date Quartet can only give us their A level “stuff” if we are strong on notes and words. Don’t be frightened, but be overly prepared so we can make art! Remember, we are performing on the Saturday Night Spectacular for thousands of people who expect something great. Let’s show our audience (and ourselves) how ordinary people can prepare to make a mountain top music experience.

……とまあこんな具合です。最後の1文のLet’s show our audience (and ourselves) how ordinary people can prepare to make a mountain top music experienceというところが、主催の期待するところなんだろうな、というのが個人的な印象。向こうの「ふつうの」Barbershopperがどれほど歌えるものなのかが分かりませんが、少なくともネイティブスピーカーでないところで自分は他の人より不利です。そんな中で十分な準備をしたとしてどこまで混じることができるのか……申し込んでから今更ながら不安に感じています。でも逆に本場を経験するチャンス!楽しみのほうが圧倒的に多いので、とにかく「prepare like a champion」を心がけることにします。

結論:7月が楽しみ!

この記事を書いている時点ではBHS Memberの残りが54人/100人、NON-Memberの残りが88人/100人なので、まだまだ余裕はありそうです。というか非会員の登録数少なくない?実は会員じゃないのに会員で申し込んでる人も多そう。

Everyone In Harmonyの紹介は以上です。今回はこのイベントにフォーカスを当てて色々書きましたが、他にも面白そうなイベントがあれば紹介していきたいなあ。日本語のBHS International紹介ページって、どうしても最新のものって少ないので、たまにはそういう志向のことをやってみてもいいかしらん。そうやってだいたいいつも3日坊主ならぬ1日坊主で終わってしまうのだけどね。

ともあれ、7月が楽しみで仕方ありません。ちょっと前まで、海外に行くことすら気乗りしないこともあるほどだった自分が、こんなに心待ちに思うなんて。バーバーショップを歌い始めて変わったな、と思います。

[1] 2016年のInternational Contestで1位を獲得したコーラスグループ。その他2004年、2009年、2012年にもチャンピオンに輝いている。ほとんど夏季オリンピックと同じ周期。

[2] タグ:簡単に言えば曲のラストの一番オイシイ部分。「タグ集」が公式に出版されていたり、アプリが作られていたりしていて、バーバーショッパーは4人集まればタグを歌いたがる生き物に調教されている。Internationalではなんと会場の到るところで自由にタグを歌うことが推奨されている(もちろん時と場合による)うえ、タグを歌いたい人が集まったり、教えてもらえるような部屋も設定されている。日本の男声合唱フリークが飲み会ですぐ斎太郎節やライチャリを歌いたがるのと精神性としては似通っているのかもしれない。

[3] 2004年のSweet Adelines International(SAI)のコンテストで1位を獲得したカルテット。SAIは女声のバーバーショップ協会で、BHS同様毎年カルテットとコーラスのコンテストが開催されています。

音楽

Posted by kwkmcm